2009年09月30日
新聞記事で見る電磁波
各紙で一番詳しく取り上げているのが、読売と産経だった。
(3)葬られた疫学からの警鐘。(2006年11月9日 読売新聞)
議論の的となった疫学研究を率いた国立環境研究所の兜氏(遺族提供) 先月10日、国立環境研究所の上級主席研究員、兜真徳(かぶとみちのり)氏が悪性リンパ腫(しゅ)で亡くなった。58歳だった。
電磁波の健康影響を研究してきた。1999年から、同研究所をはじめ、国立がんセンター、自治医大など11機関・大学の研究者が参加した大がかりな疫学研究の代表者を務めた。
全国の小児白血病患者312人の子供部屋の電磁波の強さを1週間にわたり計測する一方、603人の健康な子供を同じ居住地から抽出して同様に電磁波を計測。白血病と電磁波の関連を比較分析し、「0・4μT(マイクロ・テスラ)以上の居住環境で過ごした場合、小児白血病にかかる割合は2・6倍に上昇する」との結果をまとめた。
研究は、文科省の科学技術振興調整費から総額7億2125万円を得て行われた。だが、3年目の中間評価で中止が決まり、翌2002年11月の最終評価で、目標達成度など10項目すべてで最低の「C評価」が下され、終止符が打たれた。
評価文書は、「小児白血病患者の症例数が少なすぎる」「電磁波以外の要因が影響している可能性がある」と問題点を列挙し、「科学的価値は低く、研究の結果が一般化できるとは判断できない」と断じている。
評価の際には、14人の研究評価委員を前に、兜氏が説明し、質問に答えた。「説明が下手だった点もあるが、何か個人的うらみでもあるのか、と思うほどひどい突っ込まれようだった」と同席した共同研究者らは振り返る。
「使った金と発表された成果が釣り合わない、という非難の空気が支配的だった。疫学研究への無理解も背景にあった」と証言する委員もいる。人の集団で病気を引き起こす原因を調べる疫学は、コレラ感染や喫煙の影響解明に大きな役割を果たした。しかし、人、金、時間がかかるうえ、常に明確な結論が出るわけではないという難しさがある。
当時、文科省の科学技術振興調整費室長だった土橋久・同省地震・防災研究課長は「評価委員の座長と打ち合わせをし、入念に準備した。事務局として相当勉強した。『なんでこんな研究をやらせたんだ』と批判されますから。多額の税金を使ってね。だから力を入れて評価に臨んだんです」と明かす。
評価が下る3か月前、朝日新聞が1面トップで兜氏らの研究を報じた。
波紋が広がる。当時の原子力安全・保安院電力安全課長は、「兜氏も含め、専門家を呼んで勉強会を開いた」と言う。評価を担当した文科省の係長は、今も憤りを隠さない。「兜氏は雑誌で、『電磁波の健康被害はある。危ない』ということを根拠なく話していた。科学者としての資質に疑問を感じた」
科学技術振興調整費による研究評価は、01~05年度で計478件。オールC評価は、この1件だけだ。
電力10社のうち3社が、ホームページでこの評価を紹介する。九州電力はQ&Aコーナーで、四国電力は「疫学研究の例」の中で、それぞれオールCの成績表付きで、詳細を載せる。
生前、兜氏は、繰り返し語った。「電磁波の問題は、不安ばかりが先行し、正確に認知されていない。環境リスクに対し、日本人の意識は甘い。国や業界が『寝た子を起こすな』という姿勢なのも原因だ」
今年8月、審査を経て論文を掲載する専門誌「国際がんジャーナル」に、兜氏らの論文が載った。WHOが来春出す環境保健基準の文書にも、主な研究成果の一つとして盛り込まれる。
「間に合ってよかった」。兜氏の葬儀で、共同研究者らはほっとしながらも複雑な思いをかみしめた。
○小児白血病の発症率が倍増するという国内初の疫学調査の中間解析を国立環境研究所が公表した・・・(http://www.scn-net.ne.jp/~shonan-n/news/021207/021207.html より)
○超低周波(ELF)の電界および磁界への曝露についての、WHOのファクトシート
http://www.who.int/peh-emf/publications/facts/fs322_ELF_fields_jp_final.pdf
ELF磁界曝露と小児白血病の因果関係は認めていない。
○(4)送電線VS住民 埋まらぬ溝(2006年11月10日 読売新聞)
送電線や鉄塔が集中する街は珍しくない(東京都内で、江口聡子撮影) 住宅地に鉄塔が立ち並ぶ東京・東大和市。「送電線銀座」と呼ばれる街に、小川隆志さん(47)の一家5人が住んでいる。
2階建ての小川さん宅の3・8メートル上空を、6万6000ボルトの送電線が斜めに横切っていた。電線の下は建築上の利用制限がかかるため、割安で購入した家だ。
1993年10月、長男の健一君(当時7歳)が貧血で倒れ、急性骨髄性白血病と診断されて入院した。「電磁波が原因じゃないの」。近所の主婦に言われ、妻の博子さん(50)はそれまで気に留めなかった送電線が気になり出した。
翌年7月、送電ルート変更工事の一環として、送電線と鉄塔1基が撤去された。健一君は翌月退院し、2学期から学校に復帰した。
その後、夫妻は送電線の件を忘れようと努めているが、今でも「息子の病気は電磁波のせいだったのではないか」との思いが残る。
◇
全国の電力10社でつくる電気事業連合会(電事連)は、「因果関係は、動物実験や細胞実験も併せて評価し、総合的に判断を下す必要がある」と指摘する。10社の97年の共同研究では、ヒトの白血病や脳腫瘍(しゅよう)などの細胞に最大500μT(マイクロ・テスラ)の電磁波を3日間当てたが、がん細胞の増殖に影響は見られなかった。
電力中央研究所(電中研)でも、84年から動物実験を続ける。米国エネルギー省との共同研究では、ヒヒを使い、電磁波が中枢神経系ホルモンに影響を与えるかどうかを調べた。細胞実験を含む17件の結果は、ほぼすべて「影響なし」だった。「今のところ、環境中の電磁波が健康に悪影響を及ぼすという科学的証拠はない」としたうえで、今後も研究を続けるという。
「安全であることを証明するには、無限の努力が必要」。ある電力会社の社員はため息交じりに漏らす。
人は自らの先入観や信念に有利な情報を選ぶ傾向がある。電磁波の健康影響を巡る様々な研究の成果にはシロ、クロ両方あるが、「健康に有害」と考える住民は、無意識にクロの結論を集めがちだ。
◇
電磁波問題に取り組む市民団体「ガウスネットワーク」によると、これまでに全国で起きた送電線建設反対運動は29件。また、長野県北御牧村(現東御市)など4か所で、健康被害などを争点に送電線撤去を求める民事訴訟が起こされた。勝訴判決は1件もない。
電事連は「電力会社は住民の不安を解消するため、問い合わせに真摯(しんし)に対応している」とする。しかし、現場ではしばしば、「健康への影響はない」と繰り返す電力会社側と、不安を訴える住民側が対立する構図が見られる。
東京・日野市では2002年5月、高幡不動変電所建設を巡って近隣住民と東京電力が対立。健康への影響を懸念する住民が説明会を求めたが、東電側が工事を強行したため、市が「工事の2か月延期と住民との徹底協議」を要請する騒ぎになった。計18回開かれた説明会でも、「納得のいく説明を」と求める住民側と「電磁波は安全」と繰り返す東電との話し合いは平行線をたどった。
工事は続けられ、変電所は昨年7月に完成した。近隣の主婦は「今は被害はないが、何十年後はわからない。この地域には小さい子も多いし」と納得がいかない様子だ。
住民に不安が残る限り、電力会社との間の溝は、埋まらない。
【日本の議論】電磁波は本当に危険なの? 2009.4.5 1サンケイ
送電線や携帯電話、IH機器-。電流が流れると発生する電磁波(電界と磁界)が健康に与える影響を懸念する人が増えている。昨年7月、経済産業省のワーキンググループの提言を受けて設立された「電磁界情報センター」では「科学的根拠はない」としているが、「電磁過敏症」を訴える市民団体などでは「国や企業がもっと対応すべきだ」と主張する。幼少期からのケータイ使用など未知の研究分野も多いとされるこの問題を改めて検証した。
100基以上の基地局が…
「携帯電話の安全は確認されていない。基地局が屋上に建ったマンション住民が引っ越したという話もある」
3月31日、東京・広尾の北里大学で開かれた日本衛生学会の「携帯電話の電波の健康影響」についてのシンポジウムで、参加者が疑問を投げかけた。
ケータイの普及とともに増える基地局(アンテナ)周辺で、健康被害への不安を訴える住民から反対運動が起きている。NTTドコモなど携帯電話会社は実数を明らかにしないが、反対運動で基地局の設置計画が変更されたり、撤去されるケースもあるという。
反対住民らの相談にのってきたNGO電磁波問題市民研究会事務局長、大久保貞利さんは「研究会設立から13年になるが、反対運動による計画変更はこれまでに100基以上」と話す。
これに対して、世界保健機関(WHO)で電磁波の健康影響を調査・研究してきた電磁界情報センター所長、大久保千代次さんは「実際に健康被害があるのなら大変なことだが、科学的な因果関係を示す証拠はない。WHOも国際的なガイドラインを守っていれば、がんやその他の病気のリスクが増加するという証拠は見つかっていないとしている」と指摘する。
送電線で白血病?
電磁界情報センターによると、電磁波の健康問題が世界的に認識されるようになったのは30年前の1970年代末。
米国・コロラド州・デンバー市で、高圧送電線や配電線に近い住宅地で血液のがんである小児白血病の発生が高いことを統計的に示した研究が発表された。これは、国際的なガイドラインを大幅に下回る微弱な電磁波で健康影響を示していたことから、大きな波紋をよんだ。
また、1992年にはスウェーデン・カロリンスカ研究所が高電圧送電線周辺に住んだことのある約44万人を対象に調査し、小児白血病の発症率が高いという結果も報告されている。
ただ、住民を対象とした詳しい調査や、動物や細胞を使って電磁波の影響を調べる実験は他の国々でも行われており、喫煙と肺がんのような因果関係を示す実験データは得られなかったという。
こうした中、WHOは1996年、電磁波の潜在的な健康リスクを調査するプロジェクトをスタート。日本を含む60カ国以上が参加、リスク評価を行ってきている。2002年には、WHOの付属機関である国際がん研究機関(IARC)が発がん性評価を行い、電磁波のうち、低周波の磁界を「発がん性があるかもしれない」(人への発がん性示す証拠が限定的で、動物実験で十分な証拠がない)と分類した。これは、コーヒーや鉛、ガソリン、クロロホルムも同じ分類にあたるという。
2007年には、低周波の磁界と小児白血病との間に「因果関係があるといえるほどの証拠はない」とする見解も示した。
消えない不安感
一方で、住民の健康被害への不安はぬぐい去られたわけではない。実際に日常にある低レベルの電磁波で、耳鳴りや頭痛、めまい、疲労感、しびれなどの症状を訴える「電磁過敏症」の人たちがいる。
電磁波問題市民研究会の大久保事務局長は「WHOの報告の中には、『因果関係があると考えるほどに証拠は強くないが、懸念や不安を抱く程度の証拠は十分にある』とする部分がある。たとえ科学的に実証されなくても懸念や不安を与えることを認めているわけなのだから、企業や国は対応するべきだ」と指摘している。
こうした溝を埋めることは難しい。市民の間には、過去、公害事件などで企業や国が被害をなかなか認めようとしなかったり、証拠を隠蔽(いんぺい)したという不信感があるからだ。肺がんと喫煙の因果関係についても因果関係が認められ、対策がとられるまでには長い時間がかかった。
WHOは、広がる不安に対応するため、情報提供や研究推進を提言している。日本に電磁界情報センターが設立されたのも、そうした一環だ。
センターのスタッフはアルバイトも含め9人。WHOの報告書や海外の研究論文をデータベース化し、ホームページで公開。市民との意見交換会を東京や大阪で催した。本格的な活動を開始した昨年11月から3月までに約100件のメールや電話での問い合わせがあったという。送電線や変電所についての問い合わせがもっとも多く、家電製品や携帯電話と続いた。
子供とケータイめぐる調査開始
電磁波問題で、今最も話題になっているのが、携帯電話の使用による健康への影響だ。耳のすぐ近くで使うため、頭部や頸部(けいぶ)のがんの発症リスクが懸念されている。
1998年、英BBC放送は携帯電話会社が、脳腫瘍(しゅよう)患者から訴えられたことを報じた。逆に、米国では90年代後半にかけ脳腫瘍患者のインタビュー調査を行ったが、携帯電話使用者とそうでない者との差はなかったという。
ただ、携帯電話の使用と健康への影響をめぐる研究の歴史は浅く、データも少ないため、WHOは、日本や欧州を含む13カ国で研究を開始した。その結果は、今年中に発表される予定だ。
日本では、慶応大学医学部の武林亨教授が患者約530人、住人約1600人を対象に調査したところ、携帯電話使用とリスク上昇の関連性はなかったという結果が出たが、スウェーデンでは、10年以上の携帯電話の使用者で、聴神経腫瘍(良性腫瘍)の発生率が3倍と高かったという気になるデータも報告されているという。
武林教授は「スウェーデンの調査結果は無視できない」としながらも、「調査数が少なく、脳腫瘍の発症患者やその家族に聞き取りを行うという方法をとっており、記憶が不正確だったり、質問することで携帯電話が病気の原因という答えを誘導してしまうことがある」と調査方法自体の問題点も指摘する。
さらに、不明なのが子供への健康被害だ。子供のケータイ普及が最近であるため、世界的にもほとんど研究は行われていない。そのうえ、子供の頭蓋骨(ずがいこつ)は成人と違って小さく、形状も違っており、成人よりも携帯電話の電磁波にさらされるレベルは高い。子供の携帯電話の使用は生涯にわたるため、その影響も見ていかなければならない。
東京女子医大は、現在、小学4~6年生を持つ保護者を対象に、子供の携帯電話の影響についての調査を行っており、協力者を募集している(登録はhttp://keitai.twmu.net/)
同医大の佐藤康仁助教は「子供の悩腫瘍の発症率は10万人に2人。現在、1800人が登録しているが正確に調査するために協力者を数万人に増やしたい。子供の携帯電話の影響はまったく分かっておらず、将来の安心のためにも協力してほしい」と話している。登録者は携帯電話についての質問についてメールで専門家に答えてもらえるという特典もある。
世界各国は…
電磁波について世界各国はどう対応しているのか。
米国・カリフォルニア州は、電気事業者は、送電線や変電所の新設や拡充の際に、予算の4%を電磁波低減に使うことを定めたり、法的規制ではないが、英国やフランス、フィンランドは子供の携帯電話の使用を控えるよう勧告が出されている。これに対して、日本は国際的なガイドラインと同様の指針はあるが、それ以上の規制はとられていない。
電磁波問題市民研究会の大久保事務局長は「健康被害の因果関係がはっきりしないにしても、一般の懸念に対応するため今後、送電線を地中化したり、子供の携帯電話の使用を禁止するなどの対策をとるべきだ」と話している。
100%の安全はない。どこまで「安心」対策を行うのかはコストも伴う。科学的な結果を踏まえたうえで、判断するのは国民になってくる。
議論の的となった疫学研究を率いた国立環境研究所の兜氏(遺族提供) 先月10日、国立環境研究所の上級主席研究員、兜真徳(かぶとみちのり)氏が悪性リンパ腫(しゅ)で亡くなった。58歳だった。
電磁波の健康影響を研究してきた。1999年から、同研究所をはじめ、国立がんセンター、自治医大など11機関・大学の研究者が参加した大がかりな疫学研究の代表者を務めた。
全国の小児白血病患者312人の子供部屋の電磁波の強さを1週間にわたり計測する一方、603人の健康な子供を同じ居住地から抽出して同様に電磁波を計測。白血病と電磁波の関連を比較分析し、「0・4μT(マイクロ・テスラ)以上の居住環境で過ごした場合、小児白血病にかかる割合は2・6倍に上昇する」との結果をまとめた。
研究は、文科省の科学技術振興調整費から総額7億2125万円を得て行われた。だが、3年目の中間評価で中止が決まり、翌2002年11月の最終評価で、目標達成度など10項目すべてで最低の「C評価」が下され、終止符が打たれた。
評価文書は、「小児白血病患者の症例数が少なすぎる」「電磁波以外の要因が影響している可能性がある」と問題点を列挙し、「科学的価値は低く、研究の結果が一般化できるとは判断できない」と断じている。
評価の際には、14人の研究評価委員を前に、兜氏が説明し、質問に答えた。「説明が下手だった点もあるが、何か個人的うらみでもあるのか、と思うほどひどい突っ込まれようだった」と同席した共同研究者らは振り返る。
「使った金と発表された成果が釣り合わない、という非難の空気が支配的だった。疫学研究への無理解も背景にあった」と証言する委員もいる。人の集団で病気を引き起こす原因を調べる疫学は、コレラ感染や喫煙の影響解明に大きな役割を果たした。しかし、人、金、時間がかかるうえ、常に明確な結論が出るわけではないという難しさがある。
当時、文科省の科学技術振興調整費室長だった土橋久・同省地震・防災研究課長は「評価委員の座長と打ち合わせをし、入念に準備した。事務局として相当勉強した。『なんでこんな研究をやらせたんだ』と批判されますから。多額の税金を使ってね。だから力を入れて評価に臨んだんです」と明かす。
評価が下る3か月前、朝日新聞が1面トップで兜氏らの研究を報じた。
波紋が広がる。当時の原子力安全・保安院電力安全課長は、「兜氏も含め、専門家を呼んで勉強会を開いた」と言う。評価を担当した文科省の係長は、今も憤りを隠さない。「兜氏は雑誌で、『電磁波の健康被害はある。危ない』ということを根拠なく話していた。科学者としての資質に疑問を感じた」
科学技術振興調整費による研究評価は、01~05年度で計478件。オールC評価は、この1件だけだ。
電力10社のうち3社が、ホームページでこの評価を紹介する。九州電力はQ&Aコーナーで、四国電力は「疫学研究の例」の中で、それぞれオールCの成績表付きで、詳細を載せる。
生前、兜氏は、繰り返し語った。「電磁波の問題は、不安ばかりが先行し、正確に認知されていない。環境リスクに対し、日本人の意識は甘い。国や業界が『寝た子を起こすな』という姿勢なのも原因だ」
今年8月、審査を経て論文を掲載する専門誌「国際がんジャーナル」に、兜氏らの論文が載った。WHOが来春出す環境保健基準の文書にも、主な研究成果の一つとして盛り込まれる。
「間に合ってよかった」。兜氏の葬儀で、共同研究者らはほっとしながらも複雑な思いをかみしめた。
○小児白血病の発症率が倍増するという国内初の疫学調査の中間解析を国立環境研究所が公表した・・・(http://www.scn-net.ne.jp/~shonan-n/news/021207/021207.html より)
○超低周波(ELF)の電界および磁界への曝露についての、WHOのファクトシート
http://www.who.int/peh-emf/publications/facts/fs322_ELF_fields_jp_final.pdf
ELF磁界曝露と小児白血病の因果関係は認めていない。
○(4)送電線VS住民 埋まらぬ溝(2006年11月10日 読売新聞)
送電線や鉄塔が集中する街は珍しくない(東京都内で、江口聡子撮影) 住宅地に鉄塔が立ち並ぶ東京・東大和市。「送電線銀座」と呼ばれる街に、小川隆志さん(47)の一家5人が住んでいる。
2階建ての小川さん宅の3・8メートル上空を、6万6000ボルトの送電線が斜めに横切っていた。電線の下は建築上の利用制限がかかるため、割安で購入した家だ。
1993年10月、長男の健一君(当時7歳)が貧血で倒れ、急性骨髄性白血病と診断されて入院した。「電磁波が原因じゃないの」。近所の主婦に言われ、妻の博子さん(50)はそれまで気に留めなかった送電線が気になり出した。
翌年7月、送電ルート変更工事の一環として、送電線と鉄塔1基が撤去された。健一君は翌月退院し、2学期から学校に復帰した。
その後、夫妻は送電線の件を忘れようと努めているが、今でも「息子の病気は電磁波のせいだったのではないか」との思いが残る。
◇
全国の電力10社でつくる電気事業連合会(電事連)は、「因果関係は、動物実験や細胞実験も併せて評価し、総合的に判断を下す必要がある」と指摘する。10社の97年の共同研究では、ヒトの白血病や脳腫瘍(しゅよう)などの細胞に最大500μT(マイクロ・テスラ)の電磁波を3日間当てたが、がん細胞の増殖に影響は見られなかった。
電力中央研究所(電中研)でも、84年から動物実験を続ける。米国エネルギー省との共同研究では、ヒヒを使い、電磁波が中枢神経系ホルモンに影響を与えるかどうかを調べた。細胞実験を含む17件の結果は、ほぼすべて「影響なし」だった。「今のところ、環境中の電磁波が健康に悪影響を及ぼすという科学的証拠はない」としたうえで、今後も研究を続けるという。
「安全であることを証明するには、無限の努力が必要」。ある電力会社の社員はため息交じりに漏らす。
人は自らの先入観や信念に有利な情報を選ぶ傾向がある。電磁波の健康影響を巡る様々な研究の成果にはシロ、クロ両方あるが、「健康に有害」と考える住民は、無意識にクロの結論を集めがちだ。
◇
電磁波問題に取り組む市民団体「ガウスネットワーク」によると、これまでに全国で起きた送電線建設反対運動は29件。また、長野県北御牧村(現東御市)など4か所で、健康被害などを争点に送電線撤去を求める民事訴訟が起こされた。勝訴判決は1件もない。
電事連は「電力会社は住民の不安を解消するため、問い合わせに真摯(しんし)に対応している」とする。しかし、現場ではしばしば、「健康への影響はない」と繰り返す電力会社側と、不安を訴える住民側が対立する構図が見られる。
東京・日野市では2002年5月、高幡不動変電所建設を巡って近隣住民と東京電力が対立。健康への影響を懸念する住民が説明会を求めたが、東電側が工事を強行したため、市が「工事の2か月延期と住民との徹底協議」を要請する騒ぎになった。計18回開かれた説明会でも、「納得のいく説明を」と求める住民側と「電磁波は安全」と繰り返す東電との話し合いは平行線をたどった。
工事は続けられ、変電所は昨年7月に完成した。近隣の主婦は「今は被害はないが、何十年後はわからない。この地域には小さい子も多いし」と納得がいかない様子だ。
住民に不安が残る限り、電力会社との間の溝は、埋まらない。
【日本の議論】電磁波は本当に危険なの? 2009.4.5 1サンケイ
送電線や携帯電話、IH機器-。電流が流れると発生する電磁波(電界と磁界)が健康に与える影響を懸念する人が増えている。昨年7月、経済産業省のワーキンググループの提言を受けて設立された「電磁界情報センター」では「科学的根拠はない」としているが、「電磁過敏症」を訴える市民団体などでは「国や企業がもっと対応すべきだ」と主張する。幼少期からのケータイ使用など未知の研究分野も多いとされるこの問題を改めて検証した。
100基以上の基地局が…
「携帯電話の安全は確認されていない。基地局が屋上に建ったマンション住民が引っ越したという話もある」
3月31日、東京・広尾の北里大学で開かれた日本衛生学会の「携帯電話の電波の健康影響」についてのシンポジウムで、参加者が疑問を投げかけた。
ケータイの普及とともに増える基地局(アンテナ)周辺で、健康被害への不安を訴える住民から反対運動が起きている。NTTドコモなど携帯電話会社は実数を明らかにしないが、反対運動で基地局の設置計画が変更されたり、撤去されるケースもあるという。
反対住民らの相談にのってきたNGO電磁波問題市民研究会事務局長、大久保貞利さんは「研究会設立から13年になるが、反対運動による計画変更はこれまでに100基以上」と話す。
これに対して、世界保健機関(WHO)で電磁波の健康影響を調査・研究してきた電磁界情報センター所長、大久保千代次さんは「実際に健康被害があるのなら大変なことだが、科学的な因果関係を示す証拠はない。WHOも国際的なガイドラインを守っていれば、がんやその他の病気のリスクが増加するという証拠は見つかっていないとしている」と指摘する。
送電線で白血病?
電磁界情報センターによると、電磁波の健康問題が世界的に認識されるようになったのは30年前の1970年代末。
米国・コロラド州・デンバー市で、高圧送電線や配電線に近い住宅地で血液のがんである小児白血病の発生が高いことを統計的に示した研究が発表された。これは、国際的なガイドラインを大幅に下回る微弱な電磁波で健康影響を示していたことから、大きな波紋をよんだ。
また、1992年にはスウェーデン・カロリンスカ研究所が高電圧送電線周辺に住んだことのある約44万人を対象に調査し、小児白血病の発症率が高いという結果も報告されている。
ただ、住民を対象とした詳しい調査や、動物や細胞を使って電磁波の影響を調べる実験は他の国々でも行われており、喫煙と肺がんのような因果関係を示す実験データは得られなかったという。
こうした中、WHOは1996年、電磁波の潜在的な健康リスクを調査するプロジェクトをスタート。日本を含む60カ国以上が参加、リスク評価を行ってきている。2002年には、WHOの付属機関である国際がん研究機関(IARC)が発がん性評価を行い、電磁波のうち、低周波の磁界を「発がん性があるかもしれない」(人への発がん性示す証拠が限定的で、動物実験で十分な証拠がない)と分類した。これは、コーヒーや鉛、ガソリン、クロロホルムも同じ分類にあたるという。
2007年には、低周波の磁界と小児白血病との間に「因果関係があるといえるほどの証拠はない」とする見解も示した。
消えない不安感
一方で、住民の健康被害への不安はぬぐい去られたわけではない。実際に日常にある低レベルの電磁波で、耳鳴りや頭痛、めまい、疲労感、しびれなどの症状を訴える「電磁過敏症」の人たちがいる。
電磁波問題市民研究会の大久保事務局長は「WHOの報告の中には、『因果関係があると考えるほどに証拠は強くないが、懸念や不安を抱く程度の証拠は十分にある』とする部分がある。たとえ科学的に実証されなくても懸念や不安を与えることを認めているわけなのだから、企業や国は対応するべきだ」と指摘している。
こうした溝を埋めることは難しい。市民の間には、過去、公害事件などで企業や国が被害をなかなか認めようとしなかったり、証拠を隠蔽(いんぺい)したという不信感があるからだ。肺がんと喫煙の因果関係についても因果関係が認められ、対策がとられるまでには長い時間がかかった。
WHOは、広がる不安に対応するため、情報提供や研究推進を提言している。日本に電磁界情報センターが設立されたのも、そうした一環だ。
センターのスタッフはアルバイトも含め9人。WHOの報告書や海外の研究論文をデータベース化し、ホームページで公開。市民との意見交換会を東京や大阪で催した。本格的な活動を開始した昨年11月から3月までに約100件のメールや電話での問い合わせがあったという。送電線や変電所についての問い合わせがもっとも多く、家電製品や携帯電話と続いた。
子供とケータイめぐる調査開始
電磁波問題で、今最も話題になっているのが、携帯電話の使用による健康への影響だ。耳のすぐ近くで使うため、頭部や頸部(けいぶ)のがんの発症リスクが懸念されている。
1998年、英BBC放送は携帯電話会社が、脳腫瘍(しゅよう)患者から訴えられたことを報じた。逆に、米国では90年代後半にかけ脳腫瘍患者のインタビュー調査を行ったが、携帯電話使用者とそうでない者との差はなかったという。
ただ、携帯電話の使用と健康への影響をめぐる研究の歴史は浅く、データも少ないため、WHOは、日本や欧州を含む13カ国で研究を開始した。その結果は、今年中に発表される予定だ。
日本では、慶応大学医学部の武林亨教授が患者約530人、住人約1600人を対象に調査したところ、携帯電話使用とリスク上昇の関連性はなかったという結果が出たが、スウェーデンでは、10年以上の携帯電話の使用者で、聴神経腫瘍(良性腫瘍)の発生率が3倍と高かったという気になるデータも報告されているという。
武林教授は「スウェーデンの調査結果は無視できない」としながらも、「調査数が少なく、脳腫瘍の発症患者やその家族に聞き取りを行うという方法をとっており、記憶が不正確だったり、質問することで携帯電話が病気の原因という答えを誘導してしまうことがある」と調査方法自体の問題点も指摘する。
さらに、不明なのが子供への健康被害だ。子供のケータイ普及が最近であるため、世界的にもほとんど研究は行われていない。そのうえ、子供の頭蓋骨(ずがいこつ)は成人と違って小さく、形状も違っており、成人よりも携帯電話の電磁波にさらされるレベルは高い。子供の携帯電話の使用は生涯にわたるため、その影響も見ていかなければならない。
東京女子医大は、現在、小学4~6年生を持つ保護者を対象に、子供の携帯電話の影響についての調査を行っており、協力者を募集している(登録はhttp://keitai.twmu.net/)
同医大の佐藤康仁助教は「子供の悩腫瘍の発症率は10万人に2人。現在、1800人が登録しているが正確に調査するために協力者を数万人に増やしたい。子供の携帯電話の影響はまったく分かっておらず、将来の安心のためにも協力してほしい」と話している。登録者は携帯電話についての質問についてメールで専門家に答えてもらえるという特典もある。
世界各国は…
電磁波について世界各国はどう対応しているのか。
米国・カリフォルニア州は、電気事業者は、送電線や変電所の新設や拡充の際に、予算の4%を電磁波低減に使うことを定めたり、法的規制ではないが、英国やフランス、フィンランドは子供の携帯電話の使用を控えるよう勧告が出されている。これに対して、日本は国際的なガイドラインと同様の指針はあるが、それ以上の規制はとられていない。
電磁波問題市民研究会の大久保事務局長は「健康被害の因果関係がはっきりしないにしても、一般の懸念に対応するため今後、送電線を地中化したり、子供の携帯電話の使用を禁止するなどの対策をとるべきだ」と話している。
100%の安全はない。どこまで「安心」対策を行うのかはコストも伴う。科学的な結果を踏まえたうえで、判断するのは国民になってくる。
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